コールセンター業界でもAI活用が進んでいます。コールセンタージャパンの調査によれば、コールセンターでAIをすでに活用している、もしくは活用を検討していると答えた企業の割合は45%と多くの企業がAI活用に関心を寄せています。
AIを活用したいけど、具体的にどうやって活用できるのか、活用で見込めるメリットは何なのか、と思う人も多いでしょう。そうした疑問にお答えする、AI活用の事例や導入によるメリット、導入時の注意点などをご紹介します。コールセンターの課題をAIで解決
多くのコールセンターでよくあるのが、以下のような課題です。
コールセンターにおけるAI活用事例
以下では、実際のセンター業務において、どのようにAIを活用できるのかという事例をご紹介します。
オペレーター支援により業務を効率化
通話中にリアルタイムでオペレーター画面に回答候補を表示することで、経験の少ないオペレーターでも質の高い対応が可能です。またバーチャルアシスタントを活用することで、複雑な応対業務を簡素化し、人的ミスの軽減、効率的なオペレーションを実現することができます。
通話記録を自動要約し、後処理時間を短縮
通話後にAIが顧客とオペレーターのやり取りをテキスト化し、自動で要約します。さらに要約結果をCRMシステムに連携することで、後処理時間を最小化することが可能です。
多言語カスタマーサービスを容易に
日本語以外での通話やチャットテキストをリアルタイムで、日本語に翻訳するAI機能もあります。オペレーターは日本語のみの対応で、AIが自動で顧客の言語に変換します。多言語サポートのために、新たな人材を雇う必要もなく、多言語でのスムーズなサービス提供が可能になります。
AI自動電話応答により入電数を削減
従来は問い合わせ内容に応じて、顧客がキーパッドの数字を入力し、オペレーターにつなぐという流れが一般的でしたが、顧客の問い合わせ内容をAIが音声で認識し、AIが音声で自動回答をすることで、人間のオペレーターが対応する件数を減らすことができます。ガートナーのアナリストによれば、顧客の名前や電話番号、住所など本人確認プロセスなど一部の応対を自動化するだけでも、応答時間を3分の1に短縮できると述べています。
高度な会話型AIチャットボットを実現
従来のAIチャットボットは、簡単な質問には回答できるものの、複雑な質問になるとオペレーターに転送しなければならないという課題がありました。しかし、高度な会話型AIチャットボットでは、コールセンターのナレッジやChatGPTを組み合わせることで、人間のような自然な会話や手続処理を実現することができます。
コールセンターの運用状況を可視化
応対データや履歴は蓄積しているものの、分析活用が進んでいないという課題を抱えるセンターは少なくありません。AIであれば、音声だけでなく複数のデジタルチャネルも含め、包括的にデータを収集・分析することで、KPIのリアルタイムデータを提供したり、自動化が可能な業務の提案などを行うことが可能です。
AI導入によるメリット
上記のようなAI機能をコールセンターで活用することで、以下のようなメリットが期待できます。人件費の削減
コールセンターでAIを活用することで、これまで人間のオペレーターが対応していた問い合わせを自動化したり、オペレーター業務を効率化することで、結果的に人件費の削減にもつながります。ガートナーの調査では、会話型AIの導入により、2026年までにコールセンターの人件費が800億ドル削減される見込みだという結果も出ています。さらに、カスタマーサービスにかけるコストを抑えることで、新製品開発や新規事業など別の部門にリソースを回すことができ、企業全体にとっても大きなメリットがあります。カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上
AI活用はカスタマーサービスのあり方を大きく変えます。AIチャットボットの普及で、顧客はいつでもどこでもサポートを受けることができます。また、高度なルーティングで顧客を最適なオペレーターとマッチングさせたり、過去の応対履歴やサービス利用状況からサポートを各顧客に合わせてカスタマイズすることで、顧客満足度の向上が期待できます。AIを導入する際に気をつけるべきポイント
カスタマーサービスにおける活用事例やメリットを見ると、AIは万能ツールのように思えるかもしれません。しかし、AIでできることの限界や導入する際の注意点もあります。複雑な感情の理解が難しい
AIは基本的な人間の感情やシグナルを理解することができますが、複雑な意味合いを理解するのは難しいと言われています。高度な判断力や微妙なニュアンスの理解力が問われる場では、顧客に誤解を招く可能性があります。複雑なやり取りでは人間のオペレーターによる介入が必要なケースもあります。データの質に左右される
AIの有効性は、トレーニングに使用されたデータの質と量に左右されます。データが偏っていたり、不十分であると、間違いや不適切な応答をしてしまう可能性があります。セキュリティとプライバシー
AIシステムでは、膨大なプライバシー情報も扱うため、時にはサイバー攻撃の標的となることもあります。顧客情報をどう守るかというプライバシーの確保やセキュリティは、依然として大きな課題となっています。AIでオペレーターの仕事はなるくなるのか
Omdiaの調査によると、消費者の 38% が AI によって人間の仕事がなくなると考えており、オペレーターの 23% が AI チャットボットによって仕事がなくなると回答しています。確かにAIは強力なテクノロジーであることは事実ですが、カスタマーサービスでは人間の感情を読み解く、複雑な判断力や知識が必要とされます。AIはあくまでオペレーターやセンター業務を支援するもので、優れた顧客体験に不可欠な、人間だからこそできる共感や判断に取って代わることはできません。NICEのコールセンターAIソリューション
コールセンター運用に必要な機能を包括的に備えたクラウドCXプラットフォーム「CXone」は、顧客、オペレーター、管理者を支援するさまざまなAIソリューションを提供しています。- Enlighten Copilot – オペレーター支援AIソリューション
最適な回答候補をオペレーター画面に表示。通話内容の自動要約など、生成AIとナレッジシステムを活用し、応対プロセスの生産性向上を支援します。 - Enlighten Autopilot – 顧客向け会話型AIチャットボット
コールセンターで用意されたナレッジとChatGPTを組み合わせることによって、自然な会話、手続処理を実現します。 - Enlighten Actions – 管理者向け生成AI活用
コールセンターに点在しているデータを集約して分析。セマンティック検索を実現することで、「今日のトップ10KPIを教えて」といった管理者が知りたい質問に対し、データに基づくインサイトを提供します。